シリーズ『政治理論のパラダイム転換』(千葉眞・古賀敬太 編)全12巻
四六判上製
予定本体価格:2,500〜3,800円
2015年完結予定。
特徴:気鋭の執筆者陣による1人1冊シリーズ。激変する社会と政治に創造的に対応すべく、諸種の基本概念やイデオロギー・制度構想を再検討に付す。思想史的考察と新しい理論の構築とを結合。
*企画趣旨(編者)
*既刊の巻
*以後続巻

*企画趣旨(編者)
 20世紀末から世界は大きな変動期に入っていったが、政治理論の世界も大きな転換期にさしかかっている。アレクシス・ド・トクヴィルは、古典的名著『アメリカにおける民主主義』(1835年、1840年)の序文において、注目すべき時代観察を書き記している。「それ自体がきわめて新しい社会には、新しい政治学が必要とされる。」21世紀初頭の今、このトクヴィルの指摘は、われわれの時代的な観察および実感と呼応しているように思われる。

 主権的国民国家、権力政治、支配と被支配のメカニズム、利益政治、議会主義、政党政治など、これまで既存の政治理論のパラダイムを組み立ててきたさまざまな制度や理念的前提が、グローバルな規模で挑戦を受け、激動する社会と政治の現実に対してズレを示し始め、既存の認識枠組みでは十分に説明できない「変則性」(anomalies/トーマス・クーン)を示し始めている。環境問題、情報化社会の出現、グローバリゼーション、民族紛争、テロリズムと報復戦争の悪循環、持てる者と持たざる者との地球規模の構造的格差など、現代世界は大きな変容を示している。しかし、現今の政治学の状況は、こうした世界の激動に相即する新たな認識枠組みおよび分析枠組
みを必ずしも構築し得ているわけではない。つまり、今日の政治学は、新たな政治理論のパラダイムを取得し得ているわけではなく、その具体的形姿を示し得ているわけでもない。事実、現今の政治学は、いまだに政治理論のパラダイム転換を模索する途上にあり、しかもそうした摸索の試みの初期の段階にあるといえよう。

 本シリーズは、こうした激動する社会と政治の現実および知の今日的展開を踏まえつつ、政治理論のパラダイム転換にむけて、政治学の諸種の基本概念やイデオロギーや制度構想の再検討を行うさまざまな試図を表している。本シリーズにおいて再検討と再吟味に付されるテーマには、主権国家、権力論、市民社会論、平等、環境、生命、市民的不服従、立憲主義、共和主義、コミュニタリアニズム、リベラリズム、デモクラシー、ナショナリズム、フェデラリズムなどである。本シリーズは、こうした再検討の作業を通じて、三つの課題を追求しようと試みている。第一の課題は、政治理論ないし政治思想の基本概念、イデオロギー、制度構想の変容過程を仔細にフォローしつつ、その意味内容を精確に認識することである。第二の課題は、第一の作業を踏まえて、そのような基本概念、イデオロギー、制度構想が、現代においてどのような意味合いと役割を持ち得ているのかを、種々の角度から具体的に問い直し、今日の社会、政治、世界に対して行動および政策の規範や指針や方向づけを提示することである。そして第三の課題は、とりわけ日本の現状を問い直しつつ、日本の社会状況および政治状況に対して、分析と批判、方向づけと提言を行っていくことである。こうして本シリーズの目標は、政治理論の分野において新しい知のパラダイムを模索していく過程で、幾多の啓発的かつ果敢な理論的試みを示していくことにほかならない。
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*既刊の巻

『市民的不服従』(寺島俊穂)
 市民的不服従の思想と運動について考察するとともに、戦争廃絶の思想的基盤を明らかにする。不正な法や政策に自覚的・良心的に違反する公的行為である市民的不服従の意義と可能性について政治理論の視点から考える。

『現代のコミュニタリアニズムと「第三の道」』(菊池理夫)
 現代の英米のコミュニタリアニズムは、多くは保守的なものではなく、哲学的議論から、政策的議論へとも展開され、「第三の道」として、ブレア政権にも影響を与え、現在の日本を考える際も、有意義な主張を含んでいる。

『大衆社会とデモクラシー』(山田竜作)
 20世紀以降のデモクラシー論(大衆デモクラシー、参加デモクラシー、ラディカル・デモクラシー)を、大衆社会論、管理社会論、ポストモダン社会論など「現代社会論」の変遷の中に位置づけ、再構成を試みる。

『環境政治理論』(丸山正次)
 何(誰)をどのように守るのか? 環境保護をめぐる多様な言説を踏まえ、人間と自然の存在論、近代と自然、フェミニズムと自然、等を軸に、「政治理論としての環境論」のあるべき姿を考究。

『連邦主義とコスモポリタニズム』(千葉眞)
 
「多様性の中の統一」という組織原理としての連邦主義は、古代オリエント以来の歴史をもちながら、現代でもEUに見られるようにアクチュアルな問題として存在感を示している。その点はコスモポリタニズムについても同様である。通常別々に議論されてきた連邦主義とコスモポリタニズムを、カントからの強いインスピレーションに基づいて、共に「平和」を希求し支える構想・理念として考究

『コスモポリタニズムの挑戦』
古賀敬太
 
多くの分野で相互依存が深まり、一国内で解決できる事柄が減る一方の今、無視できない思想となりつつあるコスモポリタニズムと、国民国家に重心を置く思想との真摯な対話を試みる中で、国民国家を超える秩序像のための理論的諸問題を整理

『平等の政治理論』
木部尚志
 
平等は、人に屈辱的な思いをさせないという意味の〈品位〉を基盤にすえなければならない。そのことを原点としつつ、「複合的平等論」「運の平等主義」などの平等論を批判的に吟味、また平等と公共性や市民社会との関係をも再検討

『両義性のポリティーク』
杉田敦
 
政治に敵対性が付きものだとしても、すべての対立軸がそこに収斂する単一の敵対性があるといった考え方はもはや採用できない。さまざまな敵対性が相互に打ち消し合ったり共振したりする、複雑な政治過程の中に私たちはいる

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*以後続巻(順不同・刊行日未定。タイトルはいずれも仮)

◇『市民社会論の可能性を開く』(岡本仁宏)
 

◇『リベラル・ナショナリズムの地平──リベラリズムの〈真理〉とナショナリズムの〈真理〉』(富沢克)
 

◇『共和主義』(的射場敬一)
 

◇『帝国とコモンウェルス──「ブリテン」の記憶』(木村俊道)
 
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